精神科専門医 第9回20番 てんかん

前頭葉てんかんについての問題です。
最近の精神科医はほとんどてんかんを見なくなったため、日常臨床のみではこの分野の知識をカバーしにくいと思います。
しかし、前頭葉てんかんはパラソムニアや解離性障害との鑑別が重要になるので知識は必要です。


今回は第9回20番です。
正解はcです。


a

前頭葉てんかんは睡眠中の発作が多いことで知られています。
上記のように、パラソムニアとの鑑別が重要となります。


b.e

発作の持続時間が短く、また、発作後のもうろう状態も目立ちにくいのが前頭葉てんかんの特徴です。
そのため、睡眠中にてんかんによる異常行動が出現しても、レム睡眠行動異常症などの夢と連動した行動なのか区別がつきにくいといった注意点があります。


c

側頭葉てんかんと前頭葉てんかんでは、側頭葉てんかんの方が頻度が高いとされています。
正確な疫学情報を探しましたが、割合などは見当たりませんでした。
最近のトピックである高齢者てんかんについての数値などはありましたが、こちらも側頭葉てんかんが多いと記載されています。

d

前頭葉てんかんは自動症といって、手や足をばたばたさせたり、自転車をこぐように動かすことがあります。この行動が短時間出現し、本人に記憶は無く、発作後もうろう状態が出現しないことから、設問のように解離性障害との鑑別が非常に難しくなります。
繰り返しの脳波検査や、解離性障害の原因になりうる先行エピソードの有無、抗てんかん薬の治療反応性などに注目することが重要でしょう。
必要であれば診断目的に入院し長時間の脳波測定も考慮されます。



てんかんに関する問題ですが、若手の精神科医になればなるほどてんかんの診療を行う機会が減少しているでしょう。
しかし、昨今の高齢化社会になるにつれ、精神科診療の中で高齢者の非けいれん性てんかん重積状態などを目にする機会は増加しています
実際に、病棟でも見逃されて認知症やせん妄と診断され治療機会を逸している症例があり注意が必要ですね。

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