精神科専門医 第9回23番 統合失調症

統合失調症のおもに神経学的側面からの知見を問う問題です。
この分野はこれからも研究が進んでいくと予想されどんどんとアップデートされる領域にはなりますが、最新の知見を追いかける前に成書の内容にもとづき知識を固めておくことが重要です。

今回は第9回23番です。
正解はb, dです。


解説

a

統合失調症者における脳容積の減少は幅広い領域に認められ、カプラン精神医学にも「軸索、樹状突起、シナプスの密度低下に起因すると考えられる」と記載があります。よってグリア細胞の減少とは直接の関連はなく、誤りと考えられます。

b

現代臨床精神医学において「18FDGを用いたPETによっても統合失調症者では前頭葉の血流と糖代謝の低下がみられるとの報告が多い」とあります。よって正解です。

d

統合失調症における遺伝因子の関連では、9か所の連結部位(1q、5q、6p、6q、8p、10p、13q、15q、22q)において強い証拠が得られています。22番染色体長腕(22q)にある11.2部分の欠失は統合失調症様精神病と関連があります。よってこの選択肢は正解です。

e

眼球運動障害は統合失調症患者にみられますがカプラン精神医学にもはっきりと「薬物療法および臨床状態と無関係」であると記載されています。患者の第1度近親者にもみられるとされ、形質マーカーの可能性も考えられます。よってこの選択肢は誤りです。

c

ドパミン仮説に関する選択肢です。カプラン精神医学においてドパミン作動性機能亢進が「ドパミンの過剰な放出、ドパミン受容体の過多、ドパミンに対するドパミン受容体の過敏、またはこれらの組み合わせに起因するかどうかについて詳しく説明されていない」とも記載されており、その詳細についてはまだわかっていないという形で考えるのがよいでしょう。よって関連性が乏しいと断定するこの選択肢は誤りです。




統合失調症の画像、遺伝子、眼球運動などに関しての問題です。
前頭葉の糖代謝の低下を含めて、この内容に関しては実臨床を行っているだけでは正解することは非常に困難でしょう。
専門医試験は満点を取る必要の無い試験になっているので、このような特殊な問題に正答できるかどうかはやや運頼みの要素もあるかもしれませんね。

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