精神科専門医 第9回10番 適応障害

今回は第9回10番です。

適応障害は精神科臨床においてよく経験することが多いよう考えられます。
しかしその反面、診断基準を厳密に適用しようとすれば(主に期間の基準から)、どういった層に適用できるか難しく思えてしまう疾患概念です。適応障害に含まれない症状についての問題で、診断基準をしっかりと押さえておくことが重要な問題です。

正解は b, c です。



解説

適応障害に含まれない症状についての問題で、診断基準をしっかりと押さえておくことが重要な問題です。
DSM-5においてもICD-10においても掲載されている適応障害ですが、それぞれ診断基準の内容が異なります。
本来であれば診断基準が異なるため疾患名の横には適応障害(ICD-10)などとつけたうえで出題するのが親切ではありますが、一般に診断基準が明記されていない場合にはICD-10に準拠しているという原則の上で回答することができます。


ICD-10において適応障害は「重大な生活の変化に対して、あるいはストレス性の生活上の出来事の結果に対して順応が生ずる時期に発生する」とあります。その下位分類には、
 F43.20 短期抑うつ反応
 F43.21 遷延性抑うつ反応
 F43.22 混合性不安抑うつ反応
 F43.23 主として他の情緒の障害を伴うもの
   情緒変化(不安、抑うつ、苦悩、怒り)を認めるもの
   小児においては退行行動(夜尿、指しゃぶりなど)を認めるもの
 F43.24 主として行為の障害を伴うもの
   行為障害(攻撃的あるいは反社会的行動に至る青年期の悲哀反応など)
   を認めるもの
 F43.25 情緒および行為の混合性障害を認めるもの
 F43.26 他の特定の症状が優勢なもの

とあります。このように抑うつ気分をはじめとして、他にも情緒的あるいは行為上での諸症状を認めるというのが適応障害の診断分類における特徴で、小児においては退行行動も含みます。
要素としては、「抑うつ」、「不安」、「苦悩」、「怒り」、「攻撃性」、「退行行動」と認識しておくと良いでしょう。



以上から、「退行、抑うつ気分、攻撃的行動」を含むa, d, eがICD-10における適応障害に含まれる症状となるために、それ以外のb, cが解答であると考えるのが妥当です。




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