精神科専門医 第9回92番 薬剤


向精神薬の主に透析・腎排泄にかかわる薬理学的知識が問われている問題です。
一般的事項を知っていれば正解を選ぶことはできるかもしれませんが、正誤の判断しにくい選択肢が多く、難問と考えられます。

今回は第9回92番です。
正解は b, e です。


解説

a

ミルタザピンは添付文書やインタビューフォームにも透析除去に関する記載はありませんが、除去されないという報告もある(Schlotterbeck PM, 2008)ため、「大半が除去される」とするこの選択肢は誤りであると考えられます。

b

ミダゾラムのインタビューフォームには記載はありませんが、CKD診療ガイド2012を引用すると以下のように調整するよう記載されています。
 Ccr>50mL/min:適量
 Ccr=10~50mL/min:腎機能正常者と同じ
 Ccr<10mL/min:50%に減量
 HD(透析):50%に減量

c

炭酸リチウムの添付文書上の禁忌・慎重投与における、腎機能についての記載を確認しましょう。

禁忌

1.てんかん等の脳波異常のある患者
2.重篤な心疾患のある患者
3.リチウムの体内貯留を起こしやすい状況にある患者
 (1)腎障害のある患者
 (2)衰弱又は脱水状態にある患者
 (3)発熱、発汗又は下痢を伴う疾患のある患者
 (4)食塩制限患者

慎重投与

(一部抜粋)
リチウムの体内貯留を起こしやすい状況にある患者
 (1)腎障害の既往歴のある患者
 (2)食事及び水分摂取量不足の患者
 (3)高齢者


上記の通り、炭酸リチウムは腎障害の既往がある患者には慎重投与する必要があり、禁忌というわけではありません。

※参考
リチウム使用の上での注意点を簡単にまとめます。
リチウムは腎排泄のため、腎機能障害がある場合は容易に血中濃度が上昇するため注意が必要です。リチウム中毒は意識障害、けいれん発作、洞不全症候群などを来たし死亡に繋がる場合があります。
また、リチウム自体が腎機能障害を来たすという点にも注意しましょう。

リチウム中毒は非常に危険なため、リチウムの加療服薬が致死的になるという点と、その場合は透析での対応が必要となる点には留意が必要ですね。

その他の副作用としては、甲状腺機能低下症、副甲状腺機能亢進症、尿濃縮障害なども起こりえます。

また、脱水、NSAIDsやARBなどのRAS系阻害薬との併用で血中濃度が上昇することにも注意してください。

私が経験した症例

・双極性障害の患者が整形外科術後に血中濃度測定されないまま経過し、その後意識障害をきたしたために転院してきたが、実はリチウム中毒、腎性尿崩症となっていたというケース

・双極性障害の患者が整形外科で腰痛に対してロキソニンを処方する際に、リチウムとの併用が良くないという添付文書の情報から、何故かリチウムの方を中止され、結果躁転してしまったケース

・消化管出血で腎前性腎不全となったためにリチウム中毒となり、非けいれん性てんかん重積状態でナースステーションで車椅子に座り机につっぷした状態であったが、疎通不良というままで様子をみられていたケース

・双極性障害の患者が心不全で利尿薬が投与され、脱水からリチウム中毒となり洞不全症候群で一時ペーシングの適応となったケース

他にもいっぱいあるので書き上げるとキリがありません。

非常に有用な薬剤ですが、適正使用が重要な薬剤となっています。

d

オランザピンは腎機能による調整を行う必要がありません。

e

パリペリドンは添付文書上において、Ccrが50mL/min未満の患者には使用禁忌となっています。


第二世代抗精神病薬で腎機能障害に注意した処方が必要となる薬剤はリスペリドンとパリペリドンです。
リスペリドンの活性代謝産物が腎排泄であり、その排泄遅延が起こるため効果が遷延します。そのため、リスペリドンは腎機能障害には使用注意となっています。
そして、まさにリスペリドンの活性代謝産物であるパリペリドンは上記の通りCcrが50mL/min未満では禁忌となっています。
若年者であれば問題になることは少ないかもしれませんが、高齢者であればすぐにこの基準にかかるため注意が必要です。
この基準をあまり知らずに、無作為にパリペリドンを処方している医師をみかけます。



今回の問題は向精神薬についての知識問題です。
パリペリドンがCcrが50mL/min未満で禁忌という設問は50という数字を覚えておく必要がありますね。
この知識は出題者からすれば精神科専門医として必須の知識ではないかと推測されます。
リチウムの副作用についての知識もこれを機に確認しておきましょう。


第9回 解答一覧


目次です。各記事まとめもあり。

0 件のコメント :

コメントを投稿