まとめ 「人名を冠した症候群」

この記事では、専門医試験で過去に出題された「人名を冠した症候群」についてのまとめです。

・反映されている試験
第9回52番
第9回54番

アイウエオ順です。
・オセロ症候群(Othello syndrome)
・カプグラ症候群(Capgras syndrome)
・ガンザー症候群(Ganser syndrome)
・クヴァード症候群(Couvade syndrome)
・ゲルストマン症候群(Gerstmann syndrome)
・コタール症候群(Cotard syndrome)
・シャルル・ボネ症候群(Charles-Bonnet syndrome)
・バリント症候群(Balint syndrome)







オセロ症候群(Othello syndrome)

シェイクスピアの戯曲『オセロ』に由来する、“自傷他害の行動化傾向を帯びた嫉妬妄想”のことをいいます。




カプグラ症候群(Capgras syndrome)

人物誤認としての症状の一形態であり、瓜二つの錯覚(illusion des sosies)とも言われます。「よく知っている人物が、その人ではなく別人や偽物にすり替わっていると主張する」症状を主とします。「替え玉妄想」とも呼ばれています。


脳器質疾患に伴って生じるカプグラ症候群の場合は顕著ではありませんが、統合失調症例におけるカプグラ症候群においては、離人症や体感異常を伴うこともあるとされます。
また、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症でも見られることがあります。



ガンザー症候群(Ganser syndrome)

拘禁された者に起きる「的外し応答」を主徴候とするヒステリーないし心因性症候群を指します。
種々の意識障害、健忘、妄覚、痛覚脱失などを伴うが、幼稚症に近い退行した状態で、仮性認知症とも呼ばれていました。
解離としての理解が現在で話されていますが、カタトニアとの関連性も指摘されています。



クヴァード症候群(Couvade syndrome)

一種の心身症として理解されています。
妻の妊娠出産時期において夫にもつわり様の症状がみられることをいいます(文化人類学の文脈においては擬娩と言われます)。
この症候群の名前は非常にマニアックなので、知っている必要はないでしょう。

※擬娩(ぎべん)



ゲルストマン症候群(Gerstmann syndrome)

手指失認、左右失認、失算、失書を4徴候とする症候群で、角回が責任病巣とされています。優位半球の頭頂葉の障害です。



コタール症候群(Cotard syndrome)

種々の臓器や全身が破壊された、あるいは存在しないという否定妄想を中心に、抑うつ、不安、劫罰/憑依妄想、自傷・自殺傾向、痛覚消失、不死妄想などをともなう症候群です。
Cotardはメランコリーの重症型における心気妄想についてという論文において発表したように、精神病性を伴う重症うつ病において稀に見られます。


シャルル・ボネ症候群(Charles-Bonnet syndrome)

意識清明で視力低下があり、認知症のない老人の10%程度に見られるとされる要素ないし有形の幻視のことです。



バリント症候群(Balint syndrome)

以下の3症状を主徴候とする、視空間障害です。精神性注視麻痺(視線を随意に移動できない)、視覚性失調(目の前の対象を掴めない)、空間性注視障害(注視している対象以外に注意が及ばない)。両側性の頭頂後頭葉が責任病巣として推定されており、3徴候の揃わない不全型まで含めると、脳血管障害が病因として多いとされます。



参考文献
精神症候学 第2版

Further Reading
臨床精神医学 44巻2号 「特集 精神科医が知っておくべき症候群」

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