今回は第9回43番です。
正解(誤っているもの)はb. eです。
解説
a
抗精神病薬は大脳辺縁系におけるD2受容体の遮断により、抗精神病作用を発揮することが主だった目的です。しかし、このD2受容体遮断作用によって副作用も生じます。
黒質線条体でのD2受容体遮断によって錐体外路症状が、漏斗下垂体系でのD2受容体遮断によって高プロラクチン血症が生じることが主な副作用です。
高プロラクチン血症は男女ともにさまざまな副作用を生じ、乳汁分泌や骨粗鬆症といった両性で起こることに加え、男性では女性化乳房、性機能不全、女性では月経異常などの症状を認めます。
骨粗鬆症
高プロラクチン血症は視床下部での性腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)の分泌を抑制
GnRHの抑制により下垂体での黄体化ホルモン(LH),卵胞刺激ホルモン(FSH)の分泌低下
性腺でのエストラジオール,テストステロンなどの性ホルモンの分泌が低下
その結果、閉経後骨粗鬆症様の骨代謝異常が生じます。
c
セロトニン受容体には多くのサブタイプがあります。オランザピンなど顕著な5-HT2c受容体遮断作用を持つ薬剤では、食欲亢進(場合によっては良い面もあります)、体重増加~肥満といった症状を認めます。
その他、精神科領域で話題になるのは、5-HT1a受容体、5-HT2a受容体、5-HT3受容体でしょう。
5-HT1a受容体
前頭前野のアゴニスト作用によって、不安などの精神症状の改善や統合失調症における認知機能改善に関与する可能性が示唆されています。
パーシャルアゴニスト、アゴニストとして作用する薬剤で有名なものを以下に提示します。
・抗不安薬
タンドスピロン(セディール®)
・抗うつ薬
ミルタザピン(レメロン®、リフレックス®)
・抗精神病薬
ペロスピロン(ルーラン®)アリピプラゾール(エビリファイ®)
ブレクスピプラゾール(レキサルティ®)
5-HT2a受容体
5-HT2a受容体の遮断作用は、抗精神病薬による黒質線条体系でのドーパミン遊離を促し、錐体街路障害などの副作用軽減に役立つとされています。
また、5-HT2a受容体は前頭前野にも影響し、ドーパミンの遊離を促進します。
この作用は、第二世代抗精神病薬のほとんどで認められます。
5-HT3受容体
5-HT3受容体遮断作用は制吐作用があります。
リエゾン領域で用いられるものとしては、制吐作用に加えて食欲増進作用もある下記の薬剤が有名ですね。
・抗うつ薬
リエゾン領域で用いられるものとしては、制吐作用に加えて食欲増進作用もある下記の薬剤が有名ですね。
・抗うつ薬
ミルタザピン(レメロン®、リフレックス®)
・抗精神病薬
オランザピン(ジプレキサ®)
d
鎮静系の抗精神病薬(リスペリドン、オランザピン、クエチアピンなど)ではα1受容体遮断作用が強く、このために過鎮静となることもしばしば見受けられますが、同時に交感神経のα1受容体遮断に伴う起立性低血圧を認めることもあります。b.e
a, c, dが正解であるので消去法的にb, eが誤りであるとわかります。日光(光線)過敏の治療にH1受容体遮断薬が用いられることからも、関係はなさそうであるとわかれば選択肢bは除外ができます。ただし、クロルプロマジンやプロメタジンなど、日光過敏の副作用を呈する精神科領域で用いられる薬剤もあるため、注意が必要です。
顆粒球減少といえばクロザピンが思い出されますが、特定の受容体によるものというよりは、骨髄系細胞への直接毒性が原因と記されています。
以上から誤りの選択肢はb, eと判断できます。
正答の選択肢を直接選びにくい問題であったと思いますが、その分a, c, dについては典型的な副作用であるため、自信を持って正しい組み合わせと判断できることが必要です。
薬理学的知識も重要なポイントをサマライズしておくことが望まれます。
第9回 解答一覧
目次です。各記事まとめもあり。
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