精神科専門医 第9回79番 不安障害

今回は第9回79番です。
ICD-10におけるパニック障害について問われています。

正解(誤っているもの)は a, d です。

解説
パニック障害はICD-10とDSM-5ではその基準や立ち位置が異なる疾患であり注意が必要です。

a

ICD-10において「発作と発作の間は、不安症状は比較的欠いている(しかし、予期不安は通常認められる)」とあります。
パニック障害において「必ず予期不安がある」という言明は強すぎるため、誤りであると判断できます。

b, c

「Xは(パニック障害に)疾患特異的な症状ではない」という形式の選択肢です。したがってXがパニック障害以外でも認めるものであればこの選択肢は正しいとわかります。

※過呼吸

過呼吸はパニック発作で認める症状でもあり、下記に述べるような恐怖症性障害に伴うパニック発作でも見られることになり、ICD-10のパニック障害だけに起こるものではありません。またICD-10での全般性障害などでも過呼吸は見られるので、bは正しいです。


※広場恐怖

また広場恐怖はICD-10で恐怖症性不安障害に分類される疾患であり、パニック障害でのみ起こるというわけではありません。特にICD-10における広場恐怖では、その下位分類にパニック障害を伴う/伴わないというコードが付与されるため、「パニック障害を伴わない広場恐怖」という概念が存在します。よってcも正しいです。


d, e

ICD-10においてパニック障害は「いかなる特別な状況や環境的背景にも限定されず、したがって予知できない、反復性の重篤なパニック発作」とされています。すなわち、何らかの恐怖症的状況や環境によって(二次的に)パニック発作が起こったとするのなら、それはICD-10では恐怖症性障害の症状としてのパニック発作という診断となり、パニック障害と診断することはできません。よってdは誤り、eは正しい選択肢になります。




パニック障害に関する問題です。パニック障害とパニック発作は前者が疾患名、後者が症状名となっていますが、医療スタッフでも両者の意味合いを曖昧に理解しているケースが多いと感じます。
パニック障害、パニック発作はともに臨床でよく出会うので、きっちりとした線引きが出来るように理解しておくことが必要でしょう。
パニック障害は日常生活に大きな制限をかけ、周囲の人の理解も得られにくい疾患です。
今回は治療法には触れていませんが、パニック障害は薬物療法を中心とし、精神療法、心理教育を行うことで生活障害を緩和することができます。
今後、薬物療法についてサマライズを予定しています。



第9回 解答一覧


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