この内容に関しては実臨床で経験があれば解答しやすいと思います。
第9回の60番の問題です。
正解は e です。
a
断酒によって脳萎縮が改善するという報告がされています。海外文献での報告もありますが、国内の久里浜センターの画像が見易いので参考にしてください。
資料4 (PDFファイル) - 久里浜医療センター
b.c
ナイアシンの欠乏でペラグラ脳症が起きます。この脳症の症状は3d(4d)と呼ばれています。
下痢:diarrhea
皮膚炎:dermatitis
認知症:dementia
死亡:death
上記三つの症状が出現し、最終的には死亡するという怖い話ですね。
d
アルコール摂取と低栄養によってビタミンb1欠乏となります。このビタミンb1の半減期は2週間程度なので、摂取不足によって容易に欠乏状態になってしまいます。
今はカップメンにも含まれているため、妊娠悪阻など余程のことが無ければ欠乏はしないようになっているはずですが・・・。
さて、ビタミンb1欠乏の症状は様々です。
精神科以外での症状としては、末梢神経障害、心不全などです。
精神科ではウェルニッケ脳症と、それに続いて発症するコルサコフ症候群ですね。
ウェルニッケ脳症(Wernicke's encephalopathy: WE)
意識障害、失調性歩行障害、眼球運動障害を古典的3徴とする疾患です。大量のビタミンb1投与で改善する可逆的疾患とされています。
低血糖とビタミンb1欠乏が合併している時に先にブドウ糖のみ投与すると、解糖系でビタミンb1がさらに消費されるため注意が必要とされています。
現在は上記の古典的3徴ではなく、Caineのクライテリアが診断に用いられているとのことです。下記が引用です。
現在,WEの臨床診断には、Caineのクライテリアが 用いられる。このクライテリアは、①栄養失調、② 眼球運動障害、③小脳失調、④意識障害のうち2つを満たせば、ウェルニッケ脳症を推定診断する。彼らによ れば、106名の病理上WEと診断された患者は古典的3徴(意識障害・小脳失調性歩行・眼症状)を適用するとわずか22%しか診断できないのに比し,このクライテリア を用いることで85%に感度が上昇したと報告している。参考:アルコール関連中枢神経障害 Frontiers in Alcoholism VoL6 No.1 2018
画像はここを参考にしてください。治療は皆さんもご存知だと思いますが、大量のビタミンb1投与です。これが本当に大変ですが、治療のために頑張りましょう。
頭部MRIで中脳水道周囲、第四脳室底、視床内側、乳頭体に左右対称にHIAを呈する画像が提示されています。
「一目瞭然!目で診る症例」問題 - J-Stage
コルサコフ症候群
前行性健忘、見当識障害、作話を特徴とするアルコール関連認知症で、ウェルニッケ脳症に引き続き発症することが多いです。
ウェルニッケ脳症は未治療だと20%が死亡し、生存者の85%がコルサコフ症候群に移行するとされています。
また、また適切な治療と断酒の継続においても, 25% の患者が慢性で不可逆的な経過をたどると言われています。
約半数という根拠はかなり調べても出てきませんでしたが、上記を複合することでそれぐらいになるということでしょうか。
今後もデータを探します。
参考
Day E, Bentham PW, Callaghan R, Kuruvilla T,
George S. Thiamine for prevention and treatment of Wernicke-Korsakoff Syndrome
in people who abuse alcohol. Cochrane Database Syst Rev. 2013:CD004033.
アルコール性ウェルニッケ・コルサコフ症候群に随伴したと思われる攻撃性にメマンチンが有効であった 1症例 東女医大誌第時 臨時増刊 1 号
e
マルキアファーヴァ・ビニャーミ病
マルキアファーヴァ・ビニャーミ病はアルコール多飲者に発症する疾患で、脳梁の脱髄壊死を特徴とする疾患です。
画像は下記を参考にしてください。
中心橋髄鞘崩壊(浸透圧性脱髄症候群)
橋の脱髄は中心橋髄鞘崩壊(浸透圧性脱髄症候群)のことでしょう。浸透圧性脱髄症候群とは?MRI画像診断のポイントはこれ!(橋中心髄鞘崩壊症)
慢性的な低Na血症を急激に補正した場合に発症するため注意が必要とされていますね。
ということで、正解はeでしょう。
しかし、どれだけ探してもウェルニッケ脳症からコルサコフ症候群への移行割合の正確な数値というのはでてきません。
しかし、eの選択肢が誤りです。
目次です。各記事まとめもあり。
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