精神科専門医 第9回40番 認知症

認知症に関する基本的な問題です。日常臨床の延長でとなりますが、専門用語を知らなければ迷うのではないでしょうか。

今回は第9回40番です。
正解はdです。

a

血管性認知症の特徴の一つとして、情動失禁(感情失禁)を認めます。
会話中の本来なら少しの感情変化と思われるエピソードに対して号泣するなどの過剰な反応が見られます。感情のコントロールが出来なくなっている状態といえます。


例)退院の話をすると、「もう、先生ともさよならですね」と言いながら号泣するなど。


b

言間代(logoclonia)という現象に関しては知らない精神科医が多いと思います。

これは、原則として発語語句の終わりの部分の音節を間代性に何度も反復する症状です。
例としては、「バナナ、ナナナ」や、「そうなんです、すすす」といった症状が下記の文献で挙げられています。
アルツハイマー型認知症として進行してから出現すると考えれている症状です。

・参考
認知症に特有な言語症状とその評価 -PEMA症候群,語間代,断続言語- 
老年精神医学雑誌 第20巻第10号 2009.10


c

前頭側頭葉変性症では前頭葉機能障害によって、食行動異常が出現すると考えられています。
味の好みが変化したり、常識では考えられない食生活になるケースがあります。

例えば、ご飯にコーラをかけて食べるという行動を私は経験したことがあります。
甘いものが好きになるケースが多く、糖尿病のリスクもあがるため注意が必要です。

d

レビー小体型認知症では、色覚異常や嗅覚異常が有名ですね。
嗅覚試験はパーキンソン病でも使用されていますね。
症状に先行して出現すると報告されています。

味覚の変化についての症例報告もありますが、あまりメジャーな話ではないでしょう。
味覚過敏は口腔内の感覚が鋭敏になる症状です。発達障害などの感覚過敏の分野です。


e

クロイツフェル・ヤコブ病ではミオクローヌスを認めます。




今回は認知症についての問題でした。

認知症は地域によって、精神科、神経内科、老年内科など様々な診療かが関わっている分野です。
精神科医はBPSDの薬物治療について、抗精神病薬の使用という面で期待されています。
そのため、例え診断などの主の診療を行わないとしても、認知症についての知識、理解は必要になります。
この問題でいえば、a.c.eは正しい内容だとすぐに判断できると思います。
しかし、語間代という用語を知らなければbに関してはどれだけ考えても正誤は不明でしょう。
そして、dに関しては嗅覚異常や色覚異常についての知識はあっても、「味覚過敏」が絶対にないとは断言しにくいと思います。
そのため、b.dのどちらが正解なのかは、「語間代」の知識があるかに委ねられます。
認知症を専門としていない場合、このような問題は非常に難しいですね。


第9回 解答一覧

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