精神科専門医 第9回98番 強迫性障害

今回は第9回98番です。
ICD-10においては神経症性障害として不安障害などとともにF4に分類されている強迫性障害ですが、DSM-5においては強迫症及び関連症群ということで独立しました。そんな強迫性障害の特徴や治療などが幅広く問われています。教科書的内容を超える選択肢もあり、個々の正誤を判定するのは難しいかもしれません。

正解は a, c です。

解説

a

小児期の強迫性障害における治療的介入としてはもちろん薬物療法単体でも実施される可能性はありますが、実際的にはSSRIと認知行動療法のコンビネーションが最も奏効するとされ、CBT単独ないしはCBT+SSRI併用での治療が行われることが多いです。なかでも小児に対するSSRI使用の観点からも、CBT単独をまず第一とする治療法が一般的です(Further Reading参照)。よってこの選択肢は正しいです。

b

カプラン精神医学においては両側尾状核の体積が健常者と比較して小さいという記述しかありません。強迫性障害患者を対象とした脳部位の関心領域における体積の変化を調査したメタ解析がいくつかあり、大半の研究で眼窩前頭皮質の体積減少が指摘されています(Further Reading参照)。よってこの選択肢は誤りです。

強迫性障害における脳画像研究の知見

眼窩前頭皮質、前部帯状回ー腹側線条体を通る回路を中心として、
皮質線条体回路を構成する脳部位の体積異常
 ・前頭葉、大脳基底核、帯状束における血流亢進
 ・眼窩前頭皮質の体積減少、線条体の体積増大
 ・小児において視床体積が増大、成人において海馬体積減少

c

カプラン精神医学にはセロトニン神経系を中心とした記載しかなされていません。実際的には、セロトニン神経系障害仮説にくわえ、ドパミン神経系仮説、CSTC(cortico-striato-thalamocortical circuitry)内におけるグルタミン酸神経系の異常仮説などが推測されています。(Further Reading参照)よってこの選択肢は正しいです。

d

曝露反応妨害の第一ステップは心理教育であり、この選択肢は誤りです。

e

SSRIを充分量使用した際にも効果がみられなかった場合には変薬(SSRI内あるいは三環系抗うつ薬)あるいは増強療法(非定型抗精神病薬など)を選択するのが一般的であり、2剤目のSSRIを上乗せすることは推奨されていません。よってこの選択肢も誤りです。



一般的な成書を超える範囲での出題がなされており、正答するのは難しい問題であったかもしれません。しかしながらOCDの治療で非定型精神病薬が増強で用いられることを知っていれば自然とcを正当に選べたかもしれません。強迫性障害についてはより専門的な知識が問われる傾向にあるので、しっかりと勉強しておく必要がありますね。

この領域は専門に扱っている精神科医以外は、正直なところかなり弱いのではないでしょうか?基本的な疾患概念と発展内容をふくめたfurther studyができるようにサマライズ予定です。


Further Reading:

精神科治療学 第32巻3号、4号




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