レム睡眠行動異常症(REM sleep behavior disorder: RBD)に関する問題の解説です。
今回の問題は第9回の42番です。
正解はa.dです。
では、各設問について考えて見ましょう。
a
aの選択肢は、睡眠中のどの時期にRBDを認めやすいのかという問題ですね。
この問題はどう考えると良いでしょうか?
簡単に考えれば、「REM睡眠が睡眠周期のどのタイミングで出現するのか」という話を考えるのがわかりやすいですね。
REM睡眠
REM睡眠は入眠後の90分程度で一回目が出現し、睡眠の後半に向けて増加することが知られています。
そのため一般的な条件で考えれば、睡眠前半よりも後半で認めやすいと考えてよいでしょう。
Douglas Kirsch, MD, FAASM. Stages and architecture of normal sleep Post TW, ed. UpToDate. Waltham, MA: UpToDate Inc. http://www.uptodate.com (Accessed on January 02, 2017.) |
※ただしナルコレプシーの患者では、入眠後15分以内にレム睡眠が出現する「Sleep-onset REM period」(SOREMP)を認めることがあり、この場合は入眠直後からRBDを認めることがあるようです。面白いですね!!
参考文献:ICSD-3日本語版 P182
b
次はbについて考えてましょう。
このRBDはシヌクレイノパチーと呼ばれるような、脳内にα-シヌクレインが蓄積する変性疾患と関係します。
これらの変性疾患の症状が臨床的に発症するよりも、RBDは10年程度先行して出現することが知られています。
これらの変性疾患の症状が臨床的に発症するよりも、RBDは10年程度先行して出現することが知られています。
実際のところ、これらの疾患が重症になれば夜間の行動がなくなるため診断基準を満たすことは無くなるかもしれませんが、「自然に軽快する」訳ではありません。
この選択肢は間違い扱いで良いでしょう。
ちなみに、皆さんご存知とは思いますがRBDの治療薬も乗せておきます。
※参考
クロナゼパム:睡眠時無呼吸症候群に注意、ふらつき・転倒に注意
抑肝散:浮腫、低カリウム血症に注意
ラメルテオン:CYP3A4に影響する薬剤との併用に注意、フルボキサミンは併用禁忌
c.d
cとdの設問に関してですが、患者の行動は夢内容と連動しています。
この夢の内容というのは、喧嘩や追いかけられるなどの闘争、恐怖を伴うものが多いといわれています。
そのため、「横にいる配偶者を殴る」、「壁を殴る」、「ベッドから動き回って怪我する」ということが起きます。
患者は基本的には寝ているため「閉眼」しており、「刺激で覚醒」し、「夢内容の想起が可能」と言われています。
このような状態で呈する症状のため、障害物を避けることが困難であることは理解できるでしょう。
e
最後にeに関してですが、上記のシヌクレイノパチーはパーキンソン病、レビー小体型認知症、多系統萎縮症などの神経変性疾患です。
RBDはこれらの神経変性疾患の前駆として認められることが知られています。
アルツハイマー型認知症ではRBDを認めやすい訳ではないため、夜に異常行動を認めた場合にはBPSD、せん妄、てんかんなどの可能性を考慮しないといけませんね。
参考:睡眠障害国際分類第3版
今回はレム睡眠行動異常症(REM sleep behavior disorder: RBD)についての設問の解説をしました。
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