精神科専門医 第9回15番 統合失調症



統合失調症に関する問題の解説です。
今回の問題は9回の15番です。

正解はa.eです。
さて、この問題は包括的な知識を身につける必要があるため、下記に大まかな説明を提示します。



予後良好因子
予後不良因子


遅発性
若年発症
明らかな誘発因子あり
誘発因子なし
急性発症
潜行性発症
病前の社会的、性的、および職業的な生活歴が良好
病前の社会的、性的、および職業的な生活歴が不良
気分障害症状(特に、抑うつ障害)
引きこもり、自閉症的行動
既婚
未婚、離婚、または死別
気分障害の家族歴
統合失調症の家族歴
支援システムが良好
支援システムが不十分
陽性症状
陰性症状

神経学的徴候および症状

周産期外傷の既往歴

3年以内の寛解なし

多数回の再発

攻撃性の既往歴

カプラン臨床精神医学テキスト DSM-5診断基準の臨床への展開 第3版 より



となっており、予後良好因子と予後不良因子が対になっているケースが多いですね。

この内容に関してはある程度は記憶する必要があると思います。


予後良好因子

予後良好因子に関しては、元の社会適応がよく、気分障害の要素がありそうという点でしょう。

※逆に、双極性障害の症例においては精神病性の要素がありそうというのは予後不良因子になっています。

また、急性発症で誘因がある場合に予後が良好という点は、実臨床で考えると理解がしやすいですね。

予後不良因子

上記の通り、基本的には予後良好因子と対になっています。
予後不良因子で目に付くものは、周産期外傷の既往歴、神経学的徴候および症状、3年以内の寛解なしです。


周産期外傷の既往歴

まず、周産期外傷の既往歴について、このことが統合失調症とどのように関係しているのかについてカプランには記載がありませんでした。当然、身体的に良くは無さそうですが、これが統合失調症の予後に関わるというのは興味深いですね。


神経学的徴候および症状

次に、神経学的徴候および症状に関してです。これは、昔は知られていなかった神経変性疾患や脳炎などの影響が関与しているのでしょうか?
例えば、橋本脳症やNMDA受容体型脳炎などは、現在は検索、治療が可能ですが以前には見逃されていたと考えられます。


3年以内の寛解なし

最後に、3年以内の寛解なしについてです。
確かにそうだろう、とは思いますが3年という期間の根拠などがあるのかが知りたいところですね。



また、カプランの表には記載されていませんが、緊張病症状も予後良好因子、未治療期間が長いことは予後不良因子という報告があります。


このあたりの知識があれば正当は容易いですね。
この知識は自身の症例について、家族への説明に利用可能なため頭の片隅に入れておきましょう。


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