精神科専門医 第9回65番 法律

道路交通法による認知症と免許取得に関する問題です。
このテーマはホットなので、臨床医であれば理解しておくことが必要です(私は今回勉強しましたが・・・)。


今回は第9回65番です。
正解はa.dです。


類題
精神科専門医 第9回81番 法律こちらは精神疾患の話題にはなりますが、同様のテーマなので参考にしてください。

さて、欠格事由についてのおさらいです。
・欠格事由
1.次に掲げる病気にかかっている者であることが判明したとき。
(1) 幻覚の症状を伴う精神病であって政令で定めるもの
(2) 発作により意識障害又は運動障害をもたらす病気であって政令で定めるもの
(3) (1)及び(2)に掲げるもののほか、自動車等の安全な運転に支障を及ぼすおそれがある病気として政令で定めるもの
2 .認知症であることが判明したとき。
3 .アルコール、麻薬、大麻、あへん又は覚せい剤の中毒者であることが判明したとき。
認知症以外は症状によって運転免許が停止になるかが決まる、相対欠格でしたね。
では、今回は2017年3月からの改定道路交通法による高齢者の運転免許に関する要点をまとめます。


2001年

認知症が、改正された道路交通法により法の規制対象に。

2009年

75歳以上の高齢運転者に対して,3年に一度の運転免許の更新時に講習予備検査(認知機能検査)を受けることが義務化。

2013年

病状申告書の虚偽記載に罰則規定。

2014年

改正道路交通法では,認知症と診断した場合に医師が公安委員会に届け出ることもできることが規定。(任意通報制度)


そして、2017年に3月から施行された制度を含んだ説明をします。


認知機能検査と高齢者講習(75歳以上の方の免許更新)

こちらが75歳以上の免許更新の流れです。

運転免許の更新にあたって、認知機能検査が必須となります。これが、「講習予備検査」ですね。

認知機能検査について
簡易な認知機能確認検査です。
この時点で、「認知機能低下のおそれ」がありとなると、「臨時適正検査」という専門医の診断を受ける必要があります。この時点で、認知症と診断されると免許証の停止・取り消しとなります。

「認知機能は低下しているが、認知症ではない」という場合は運転免許の更新は可能ですが、半年毎に診断書の提出が必要になります。
認知症かどうか!?が重要になるため、認知症診療に携わる医師の責任が大きいですね。


「講習予備検査」第3分類 認知機能が低下しているおそれなし→2時間の合理化講習
第2分類 認知機能が低下しているおそれあり→3時間の高度化講習
第1分類 認知症のおそれあり→専門医の受診

となるので記憶しておきましょう。

臨時認知機能検査と臨時高齢者講習(75歳以上の方)
さて、こちらは基準行為という項目から始まっていますが、これは信号無視などを含めた18種類の行為が政令で定められています。
75歳以上で上記の基準行為を行った高齢者は、「臨時認知機能検査」を受講する義務が発生します。
この臨時認知機能検査で「認知症の疑いあり」となった場合は、専門医の受診が義務付けられます。
ここで認知症と診断された場合も免許証の停止・取り消しとなっています。
また、認知症ではないものの認知機能が低下している場合は、臨時高齢者講習を受講する必要が出てきます。


高齢者の運転免許に関しては、「免許更新の際」と「18種類の違反の際」という二段構えでの対応となっています。

特集 「高齢者に係る交通事故防止」
若年層と75歳以上の高齢層で死亡事故件数が高いことを考えれば、このような対策がされていることも不思議ではありませんね。

今後も精神科医は運転免許に関わることが多くなると思います。
私個人の意見では、運転シミュレーションなどを導入して欲しいところです。
今後も認知機能検査による運転可能かどうかの判断をしないといけないと思うとしんどいです。



a

認知症以外は相対欠格ですが、認知症だけは絶対欠格に位置づけられています。

b

上記にもある通り、2014年からは任意の通報制度が開始されています。

c

上記にもある通り、2013年からは虚偽記載に罰則が規定されています。

d

講習予備検査は75歳以上からです。死亡事故増加が75歳で著しく増加し、また認知症割合が増加していることも理由でしょう。

e

これは日本語が不自由な選択肢です。
講習予備検査で第一分類(認知症疑い)となった場合、専門医による診断書が必要になることは上記の通りです。
しかし、この選択肢の文章からは、「講習予備検査で第一分類(認知症疑い)とするには医師による診断が必要である」とも解釈が可能です。
ほかの選択肢から考えれば、この選択肢は前者を意味しています。


さて、運転免許と認知症についてです。
過去問の項目にしては解説が多くなりましたが、今後は別にサマライズしてわかりやすくしたいと考えています。
この事項はしばらく精神科医が担わなければいけないため、ぜひ理解を深めておきましょう。



参考
医師が関係する道路交通法
高齢運転者に関する交通安全対策の規定の整備について
医療的側面からみた改正道路交通法に関して 老年精神医学雑誌 29(増刊-1): 46-55, 2018.






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