精神科専門医 第9回8番 異性装障害(transvestism disorder)

パラフィリア障害のひとつである、フェティシズム的服装倒錯症についての設問です。フェティシズム的服装倒錯症はICD-10における診断名で、DSM-5においては異性装障害(transvestism disorder)という診断名で分類されています。

今回の問題は第9回の8番です。

正解(誤っているもの)はa.dです。
フェティシズム的服装倒錯症は「性的興奮を得ることを目的に異性の衣服を着用する一連の性嗜好障害」です。
性同一性障害の人が「出生時のジェンダーと反対のジェンダーになりたいという願望」から異性の衣服を着用する、という状況を比べることでより違いを明瞭にすることができるでしょう。


a、b

詳細な有病率についての報告はありませんが、ほとんど男性にみられる性嗜好障害です。DSM-5における異性装障害の記載では女性にも稀に見られるとされます(そもそも、全例が男性、という性嗜好障害自体が想像しにくいものです)。
幼少期から思春期早期にかけてその多くは始まるとされます。


c、d

症例の性別を(出生時)男性と仮定して話をします。
フェティシズム的服装倒錯症においては性的興奮を得ることが異性装をする主目的であるので、普段は男性として過ごすことが多く、男性の振舞い、男性の服装をします。
女性の衣服や下着を着用したり、カツラや化粧をつけることもあります。
しかし、性的興奮をひとたび得る(オーガスムに至る)と「異性装を解きたいという願望」が生じることになります。つまり、自身の性別に対する違和感を持っていないことが通常です。


似た名前に両性役割服装倒錯症と呼ばれる疾患名がICD-10には存在しますがこちらは性同一性障害の一群に含まれ、上記の例を用いるのなら、女性になりたいという希望を叶えるために異性装をおこなう男性を指し、異性装による性的興奮を伴わないものとなります。
※cross-dresserとは異性装者の総称で、性同一性障害としての両性役割服装倒錯症、性嗜好障害としてのフェティシズム的服装倒錯症など反対のジェンダーの服装を身に付ける人たちのことであります。


e

診断基準にかかわる細やかな問題です。
一般的な感覚からa、dが誤りであることがわかり、フェティシズム的服装倒錯症における最低限の知識からb、cが正しいと分かれば、自動的にeが誤りであると判別できます。


ICD-10におけるフェティシズム的服装倒錯症においては、「服装倒錯行為そのもの」を必要とします。
DSM-5における異性装障害のA基準には「少なくとも6カ月間に渡り、異性の服装をすることから得られる反復性の強烈な性的興奮が、空想、衝動、または行動に現れる」とあるため服装倒錯行為そのもの自体を必要としないと解釈できます。いずれにせよ、当該の空想が長期間持続しているだけでは、B基準の「臨床的に意味のある苦痛、または社会的、職業的、またはその他の重要な領域における機能の障害を引き起こしている」ことにはならないため、診断はできません。

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いずれにせよ、性嗜好障害は分類も多く、専門医試験には100問中1問出るか出ないか、という頻度であるため、体型的に学ぶにしてもコストパフォーマンスが悪すぎます。精神科専門医として最低限必要な知識はどのようなものか?30分程度で読み切れる内容でまとめていく予定です。そういったサマライズを用いて効率よく勉強していくのが良いでしょう。

2 件のコメント :

  1. 設問は「適切なのはどれか、2 つ選べ」ですので、b, cではないでしょうか?

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