精神科専門医 第9回74番 認知症



認知症に関する問題の解説です。
今回の問題は9回の74番です。

正解はcです。


では、各設問について考えて見ましょう。


a

老人斑

アミロイドβ(Aβ)が沈着したものです。
Aβはアミロイド前駆体タンパク(amyloid-beta  precursor protein:APP)が、βセクレターゼ、γセクレターゼによる切断を受けて生成します。
健常者であればAβ40が生成されますが、アルツハイマー型認知症ではAβ42の産生率が増加しています。
このγセクレターゼを阻害する薬剤でアルツハイマー型認知症の治療薬開発がなされました。
しかし、γセクレターゼはnotchと呼ばれる、皮膚悪性腫瘍と関連するカスケードに関与しているため、皮膚悪性腫瘍リスクの増加が認められるため認知症の治療薬として成功しませんでした。
上記説明の通り、アルツハイマー型認知症との関連があります。




b

ピック嗜銀球

前頭側頭葉変性症(FTLD)と関係しています。ピック病の病理所見に必須と考えられていた病理所見です。
現在、FTLDは病理所見を元に細かく分類されています。


c

アミロイド小体

網膜や視神経に見られる、疾患に関連していない物質のようですね。


d

αーシヌクレイン

レビー小体型認知症で見られる病理所見です。
シヌクレイノパチーとしては、パーキンソン病やレビー小体型認知症、多系統萎縮症などが挙げられます。
また、パーキンソン病とレビー小体病を併せて、レビー小体病と呼ぶ概念もあります。

つまり

レビー小体病:パーキンソン病+レビー小体型認知症
シヌクレイノパチー:レビー小体病+多系統萎縮症
となります。


e

アルツハイマー神経原線維変化

タウの蓄積による病理所見です。
アルツハイマー型認知症はAβ(老人斑)とタウ(神経原線維変化)の病理所見が特徴とされています。

このアルツハイマー神経原線維変化はアルツハイマー型認知症以外にもタウオパチーと分類される疾患に関係しています。
こちらは比較的新しい概念になりますが、原発性年齢関連タウオパチー (primary age-related tauopathy:PART)に関連している病理所見です。


原発性年齢関連タウオパチー (primary age-related tauopathy:PART

PARTには有名な疾患としては、神経原線維変化型老年期認知症(SD–NFT)です。
SD-NFTは90歳以上の高齢者では20%以上を占めるといわれている、記憶障害を主症状とします。しかし、アルツハイマー型認知症と異なり、進行が非常に遅く、その他の認知機能や人格が比較的保たれる認知症です。


この問題は知識問題です。

恐らくですが、精神科医にとってはa.d.eは常識なので、b.cで悩むのではないかと思います。
「ピック病」についての知識があれば、正解にたどり着くことが可能だとは思うため、基本的には消去法の問題になると思います。



第9回 解答一覧

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