精神科専門医 第9回19番 統合失調症

今回は第9回19番です。
統合失調症の死亡リスクについての問題です。
この内容は臨床に携わる精神科医としては必須になると思います。
これを機に記憶しておきましょう。





正解は c です。


解説

a

抗精神病薬と突然死のリスクについて 2015Vol.5 No.2認知症の最新医療1. Ray WA, Chung CP, Murray KT, Hall K, Stein CM. Atypical antipsychotic drugs and the risk of sudden cardiac death. N Engl J Med. 2009;360:225-235.


下記にもある通り、統合失調症に対して抗精神病薬を使用することは死亡リスクを減少させます。
しかし、この図を見ると定型抗精神病薬、非定型抗精神病薬のどちらにおいても、用量依存的に心臓突然死の出現頻度が上昇していることがわかります。
ちなみに、ここでの低用量、中用量、高用量とは、クロルプロマジン換算で低用量が100mg以下、中用量が100~299mg、高用量が300mg以上となっています。
治療に必要な用量はこのような背景知識も参考にして決定する必要がありますね。

b

精神科専門医 第9回7番 統合失調症でも解説しましたが、抗精神病薬の使用は死亡リスクを軽減することが知られています。

統合失調症患者への抗精神病薬治療と生命予後一フィンランドにおける長期間の全人ロ調査結果から一


c

統合失調症の寿命は一般人口より15~20年短く、その差が28%が自殺、約12%は事故死、約59%は自然史で説明されるとも報告されています。
剖検例の検討から統合失調症患者の突然死については、心血管系疾患が60~70%で、呼吸器系疾患(肺血栓塞栓も含む)が10~20%、原因不明突然死は10%程度と報告されています。

d

統合失調症の死亡リスクに関しては、抗不安薬や睡眠薬として使用されるベンゾジアゼピン系薬剤を併用することで死亡リスクの増加と関連することが示されています。

e

統合失調症患者への抗精神病薬治療と生命予後一フィンランドにおける長期間の全人ロ調査結果から一 Schizophrenia Frontier vol. 11 No.2 55
各薬剤と死亡リスクについての報告です。
Adjusted HRを見てわかる通り、クロザピンが自殺による死亡リスクを含めたすべての心による死亡リスクが軽減していることがわかります。
クロザピンによる死亡リスクの低さは、クロザピン使用症例のモニタリングの密さや、クロザピン自体の治療効果に伴うといった可能性が考えられています。



統合失調症の死亡リスクについての問題です。
選択肢としては、a.b.dが正しいことは直観で判断できると思います。
eに関しては、クロザピンに関する知識がないと正誤の判断は難しいでしょう。
特に、クロザピンが使用される背景を考えると、死亡リスクが高いのではないかと推測する可能性があります。この問題を通して死亡リスクについて学びましょう。



参考
No.4808 2016.6.18日本医事新報
藤井康男:臨精薬理.2013;16(8):1165-72.
・抗精神病薬投与中の突然死 臨床精神医学 43(11):1641-1646,2014
・統合失調症患者への抗精神病薬治療と生命予後一フィンランドにおける長期間の全人ロ調査結果から一 Schizophrenia Frontier vol. 11 No.2 55
・抗精神病薬と突然死のリスクについて 2015 Vol.5 No.2認知症の最新医療

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