精神科専門医 第9回6番 パーソナリティ障害

DSM-5においてはDSM-IV-TRと大きな変更点はなかったパーソナリティ障害ですが、ICD-10と診断基準が異なっていることなどから混乱しやすい分野です。
パーソナリティ障害全般や、各障害についてまとめておくことが重要です。


今回の問題は第9回の6番です。パーソナリティ障害全般についての出題であり、総論的な内容を押さえておけば難しい問題ではありません。

正解はb, dです。

解説


a

米国での双生児研究などからパーソナリティ障害の多くには遺伝要因が指摘されています。
DSM-5では各パーソナリティ障害ごとに記載されていますが、カプラン精神医学には各クラスターごとに以下のような記載がされているのでまとめてみました。



A群(猜疑性、統合失調質、統合失調型)

対照群よりも統合失調症を有する生物学的近親者が多い。

B群(反社会性、境界性、自己愛性、演技性)

明らかに遺伝的基盤がある。

C群(強迫性、依存性、回避性)

遺伝的基盤がある可能性がある。




b


パーソナリティ障害の人の病識に関する出題です。
カプラン精神医学にも記載されているようにパーソナリティ障害の人は一般的に精神医学的な援助を否定し、自身の問題を否認することの方が多く、家族や職場の同僚に指摘されての受診となるケースが多くなります。
これは一般的に、パーソナリティ障害の諸症状が、自我親和的で環境変容的な側面が強いからであるという指摘がなされています。


自我親和的

自我が症状を容認しており、違和感がない (←→自我違和的)


環境変容的

自分自身が変容しようとせず、外環境に原因を求め、変えようとする。


c


パーソナリティ障害が重要視される一因子として、カプラン精神医学の記載を参照します。


パーソナリティ障害は一般的かつ慢性的な障害であり、一般人口の10~20%に見出される。障害の出現期間は数10年におよぶ。すべての精神障害患者のおよそ50%にはパーソナリティ障害があり、それは他の臨床症候群としばしば合併する。




d


DSM-5におけるパーソナリティ障害の定義を参照します。


パーソナリティ障害とは、その人が属する文化から期待されるものから著しく偏り、広範でかつ柔軟性がなく、青年期または成人期早期に始まり、長期にわたりかわることなく、苦痛または障害を引き起こす内的体験および行動の持続的様式である。


e


bの解説を参照してください。症状が自我親和的であり本人の病識が乏しい以上、ありえない選択肢であるとわかります。
受診にあたっては周囲の人が困って受診したり、パーソナリティ障害によって不適応を起こしたことで抑うつ状態などを主訴に受診したりというケースがあります。




今回はパーソナリティ障害の問題の解説です。
どうでしょうか?
aの選択肢は臨床実感と一致していると思うため受け入れやすいと思います。

b.eについては裏返しの選択肢ですね。
この内容は自我親和的、自我違和的についての理解と、環境変容的についての知識があれば正誤の判断が可能になります。

cは実臨床で明らかに合併例が多いため、臨床実感と一致しているので腑に落ちやすいですね。

dはパーソナリティ障害の定義に含まれているため、しっかりと認識しておきましょう。


パーソナリティ障害に関してはこの分野を専門に扱っていない限り、全てを深く理解している医師は少ないと思います。
専門医試験の対策のために、基本事項をこの機会に勉強しましょう!


第9回 解答一覧

目次です。各記事まとめもあり。

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