時間がある方であれば、DSM-5やカプラン精神医学の該当箇所に目を通しておくとよいでしょう。
今回の問題は第9回の14番です。
正解はdです。
性同一性障害(性別違和)は出生時のジェンダーと本人の自覚するジェンダーとが著しい不一致を起こしている状態を指します。
ここでDSM-5では、つまり、簡単に言えば「指定されたジェンダー 」は身体、「表出するジェンダー」は心のイメージです。
出生時のジェンダー=指定されたジェンダー
本人の自覚するジェンダー=その人が体験し、表出するジェンダー
のように表現されています。
きん○ち先生で上戸彩が演じていたのは
「指定されたジェンダー 」は女、「表出するジェンダー」は男
さて、解説に入りましょう。
a
性比は児童思春期と青年、成人期とで変わります。成人期においては海外と日本とで傾向が違うことも特徴にはなるでしょう。DSM-5における有病率についての記載を参照します。子ども…出生時のジェンダーが男性>出生時のジェンダーが女性
青 年…男女ともに同程度
成 人(非日本)…出生時のジェンダーが男性>出生時のジェンダーが女性
(日本においては逆転する!)
成 人(日本)…出生時のジェンダーが女性>出生時のジェンダーが男性
子どもにおいては出生時のジェンダーが男性である例の方が、出生時のジェンダーが女性である例よりも多くなります。
およそ2:1~4.5:1となると書かれています。
b
子どもの診断基準の一部そのままです。
子どもの診断基準のポイントは、
①『反対のジェンダー、指定されたジェンダーとは異なるジェンダー』へと志向した言動や行動と、
②『自身の性器への嫌悪、自身の体験するジェンダーに見合う第1、2次性徴の希望』
①を具体的に述べれば、反対のジェンダー(指定されたジェンダーと異なるジェンダー)になりたいという強い欲求があったり、そうであると主張するような言動として表出されることもあります。
また、反対のジェンダーの衣服をまとう、ごっこ遊びにおいて反対のジェンダーの役割を好む、反対のジェンダーの遊び友達を好む、反対のジェンダーに定型的に好まれる遊びや玩具を好むなどといった、反対のジェンダーを強く志向した行動をとる一方で、指定されたジェンダーの遊びなどは拒む傾向にあります。
これらがそのまま診断基準に組み込まれています。
②については具体例は示されていません(DSM-IV-TRにはあった!)が、例えば出生時のジェンダーが男性の場合においては
「自分の陰茎や精巣が気持ち悪く、なくなったほうが良い」
といった訴えとして認められることがあります。
c
社会的な認知の不足から、当事者はいじめ、不登校をはじめとしてさまざまなトラブルを抱えやすいといわれます。実際に子どもの例においても、より抑うつ、不安、衝動制御の問題が多いとされ、成人例においては、それらに加えて自傷、自殺傾向、物質乱用をより高率に引き起こすと書かれています。
カプラン精神医学においても、トランスジェンダーである人々の自殺念慮の生涯有症率は40%程度みられるとあります。
d
この選択肢は少し細やかな事項を問うていると考えられます。しかしながら、a、bが正しいことは診断基準を把握していれば判断でき、c、eについても間違いではなさそうだと一般的な判断ができれば、自然にdが誤答×であると判断できます。とはいえ、カプラン精神医学、DSM-5を参照にして、性自認~性別転換行動へ至る道筋を見ておきましょう。
性自認(自分が男性または女性であるという認識)はほとんどの場合、2-3歳の時期に形成されます。性同一性障害は思春期以前に、すでに児童期において見出されることが多く、持って生まれたジェンダーとは異なる行動(性別転換行動)が見られるのは、医療機関を受診する子どもの中においては、2-4歳の間に見られることが多いとされます。
e
ジェンダーの不一致が継続する場合、「成人期にはトランスジェンダー(出生時のジェンダーと自認するジェンダーとが異なる状態)」を自認する傾向があります。
これは少しわかりにくいですが、自身がトランスジェンダーという存在であることを認識するということですね。
解答:d
私自身はこの内容については、全く知識が無かったので正答は非常に困難でした。
しかし、全くの知識が無い状態でも、b.c.eは恐らく正しいのだろうなと直観的に、経験的にわかります。
a.dについては知識がないと正当は難しいかもしれません。
私の個人的な経験では、小学生頃からそのような傾向だった友人がいたという記憶がありdは間違いではないかという風に考えました・・・。
今回、別の医師がまとめた解説で非常に理解が深まりました。 この問題は一度学習すれば、次からは正当しやすいと思うので勉強しておきましょう。
第9回 解答一覧
目次です。各記事まとめもあり。
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