精神科専門医 第9回45番 パーソナリティ障害

ICD-10で提示されている依存性パーソナリティ障害はDSM-5ではC群パーソナリティ障害に分類されています。その一般的な特徴について問われている問題です。

精神科専門医 第9回6番 パーソナリティ障害
こちらで、A群、B群、C群についての簡単な説明があるため、参考にしてください。

今回の問題は第9回の45番です。

正解(誤っているもの)はc, eです。


解説
依存性パーソナリティ障害はDSM-5ではC群パーソナリティ障害に分類されており、分離への恐怖をもち、責任を他者に預け、従属的で面倒を見てもらいたいというような特性を持つものです。
そのため(しがみつき安心を得るため)には「不釣り合いな関係の中で自己をないがしろ」にしてまでも関係性を維持しようとするのが特徴です。
そういった視点から選択肢を検討します。


a

カプラン精神医学に「幼児期に慢性の身体疾患のあった人は、この障害(依存性パーソナリティ障害)になりやすい」とそのまま記載されています。


b

DSM-5における診断基準を参照すると、基準(2)や(4)にもあるように、自己不信ゆえに自分の判断や能力に基づいた行動をとることが難しく、責任のある立場を苦手とします。


c

DSM-5の診断基準(7)にあるように、自分が依存できる対象を必死で求めることが特徴の一つです。しかしながらカプラン精神医学に記載されているように「依存性パーソナリティ障害の人は次々といろいろな人に依存するというより、むしろ1人の人と長期の関係」をもつために、不特定多数の他者を渡り歩くといったことは特徴的でありません。
よってこの選択肢は誤りです。


d

DSM-5の診断基準(5)とその診断的特徴にも記載されていいます。


他者に依存するために、
関係性を維持するために不合理な要求にも答える ・ゆがんだ関係性を維持しようとして自己を犠牲にする

このような特徴があります。
そのため「言語的、肉体的、あるいは性的虐待に耐えたり」することがあります。
よって正しい選択肢です。

※具体的に明言はいたしませんが、某所で提示されている回答では本問の正解は「d, e」になっています。これは上記のようにDSM-5にも明記されているので、正しくないと思います(個人的な懸念です)。


e

同様に基準(5)にあるように患者は依存がその本質であるがゆえに「治療者には従順」なことが多いです。
またカプラン精神医学にもあるように、

「面接場面で、患者は素直に見える。彼らは協力的で、特殊な質問も歓迎し、そして指示に従おうとする」

とあります。
よってこの選択肢は誤りです。
一般的には回避性パーソナリティ障害の特徴をあらわしたものとなります。



パーソナリティ障害の問題は、私個人の意見としては非常に難しく感じています。
その理由として、きちんとした勉強をしていないことが原因でしょう。
例えばこの設問に関しては、直観的にa, b, dが依存性パーソナリティ障害と一致している(すなわち、c, eが正解)と判断できるかもしれません。これは、試験テクニックとしては良いですが、専門医試験の役割としては良くないと考えます。

パーソナリティ障害に関して、それぞれの特徴を正確に捉えることが適切な診断や診察室での医師の対応につながると思うので、この試験を通して簡単にでも勉強することが望ましいですね。


第9回 解答一覧

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