精神科専門医 第9回37番 強迫性障害


今回は第9回37番です。
ICD-10においては神経症性障害として不安障害などとともにF4に分類されている強迫性障害ですが、DSM-5においては強迫症及び関連症群ということで独立しました。そんな強迫性障害の症状についての出題です。

正解(誤っているもの)は e です。

解説

強迫性障害の特徴的症状は①強迫観念と②強迫行為の2つに分けて考えることができます。それぞれの選択肢の症状がどちらにあたるかを検討していけばよいでしょう。
では、DSM-5における定義を確認しましょう。

強迫観念:
(1)繰り返される持続的な思考、衝動、またはイメージで、障害中の一時期には侵入的で不適切なものとして体験されており、たいていの人においてそれは強い不安や苦痛の原因となる。
(2)その人はその思考、衝動、またはイメージを無視したり抑え込もうとしたり、または何か他の思考や行動によって中和しようと試みる。

つまり、強迫観念とは
1)侵入的で不適切な「思考・衝動・イメージ」を繰り返し体験し、不安や苦痛の原因となる
2)それを無視したり押さえ込もうと別の行為を試みる
ということです。

「繰り返される」「侵入的」で「不安・苦痛」の元になる「思考、衝動、またはイメージ」を、なんとか和らげようとする葛藤が出現することがわかりますね。

強迫行為:
(1)繰り返しの行動または心の中の行為であり、その人は強迫観念に対応して、または厳密に適用しなくてはいけないある決まりに従ってそれらの行為を行うよう駆り立てられているように感じている。
(2)その行動または心の中の行為は、不安または苦痛を避けるかまたは緩和すること、または何か恐ろしい出来事や状況を避けることを目的としている。しかしその行動または心の中の行為は、それによって中和したり予防したりしようとしていることとは現実的な意味ではつながりをもたず、または明らかに過剰である。

つまり、強迫行為とは
1)強迫観念や厳密な決まりにしたがって、行動や心の中の行為を行うように駆り立てられていると感じる
2)この行為は、本人は不安などの緩和を目的とするが、行為自体が現実的な解決につながらない、または明らかに過剰となる
ということです。

おまじないやルーチンの程度が行き過ぎたものといった認識でしょうか?
本人にとっては自己治癒的な行動ですが、日常生活に影響がでることは明白ですね。


a

ためこみ(hoarding)は強迫観念としても強迫行為としてもどちらの表現型としてもみられることがあります。

何か「物をためこむ」という行動で「思考、衝動、またはイメージ」への不安などを中和するということでしょう。
これは、確かに上記の「強迫観念」、「強迫行為」と関係があるとわかりますね。

b

数字へのこだわりは確認(checking)や繰り返し(repeating)、数かぞえ(counting)の一環として「儀式行為」として見られることが多いでしょう。

c

落とし物をしないかという過剰な心配も「確認強迫」としての理解が可能でしょう。

d

事故を起こさないかどうかという恐怖は、侵入思考のひとつです。「運転中に人を轢いてしまったかもしれない」と道を何度も確認して回るために仕事に行けなくなる、というのが典型例でしょう。

e

a~dがすべて強迫の症状であるため自動的にeが誤りの選択肢になります。
周囲からの注視に過敏になるのは社交恐怖で一般的にみられる症状の一つであり、単体で見ても強迫症の症状からは除外できるでしょう。



強迫性障害は、純粋にICD-10のみの勉強ではなく、過去問では身体醜形障害(DSM-IV)などの出題もあることから、今後DSM-5に基づいて勉強をしておくことが望まれます。
この領域は専門に扱っている精神科医以外は、正直なところかなり弱いのではないでしょうか?
基本的な疾患概念の理解ができるようにサマライズ予定です。


第9回 解答一覧


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