精神科専門医 第9回34番 不安障害

今回は第9回34番です。
社交恐怖は社交不安症/社交不安障害としてDSM-5においては不安障害群のなかに含められている疾患です。一般的事項をひと通り学んでおくことで正解を選ぶことができると思われます。



正解(誤っているもの)は b, e です。



解説

DSM-5において不安障害群は発症の年齢に合わせて、発達段階における構成にもとづいた順で疾患が記載がなされています(幼少期に多い分離不安からはじまる)ので、わかりやすい構成になっています。不安障害を併存する患者さんは多く、典型的な病像なら精神科医であればだれでも想起できると思います。そういった典型例を頭に思い浮かべながらDSM-5やカプラン精神医学で補強する勉強をすれば、より知識をつけることができるでしょう。

a

典型的には社交不安は「小児期後期あるいは青年期早期に発症(カプラン)」しやすいとされ、「成人期における初発はまれ(DSM-5)」とされています。小児期においては、大人とのやり取りだけでなく、仲間内でのやりとりにおいても社交不安が発生していることが必要です。

b, c

社交不安症の本態は「他者によって注視されるかもしれない社交状況に関する著明または強烈な恐怖または不安(DSM-5)」です。そのために回避・忍耐する経過を通して苦痛や機能障害を呈している状態です。
状況が公衆の面前で話したりする場合に限定されている場合には、「パフォーマンス限局型」の特定子が付与されます。

身体醜形恐怖(醜形恐怖症)はDSM-5においては強迫症群に含まれているように、強迫症に類縁の疾患と考えられています。身体醜形恐怖においても社会的引きこもり状況になることは考えられますが、その社交への恐怖と回避が自身の外見における信念にのみ基づくのであれば、社交不安症とは鑑別されます。「社交恐怖の中に身体醜形恐怖が含まれる」といったことはありません。社交不安における中核症状とは本質的に異なるものであることを理解しておきましょう。

d

社交不安はさまざまな疾患を併存することが知られています。以下にそれをまとめてみました。

社交不安の併存症

他の不安症、気分障害(うつ病、双極性障害)、物質使用障害
 ※社会的引きこもり・孤立の結果、うつ病となっていくことも多いです
 ※社交不安は限局性恐怖、分離不安を除く他の不安症に先行することがあります
 ※薬物乱用による離脱症状などでより社交不安を増悪させることもあります

醜形恐怖症
 ※醜形恐怖があり、社交状況に出て注視されることによる恐怖や不安を呈している場合、一般に社交恐怖を伴うと判断されます

パーソナリティ障害との関連

回避性パーソナリティ障害
 ※パフォーマンス限局型でない社交不安症においては、しばしば回避性パーソナリティ障害の診断を満たす

児童思春期における併存

高機能自閉症、選択制緘黙

e

社交不安症においてはパニック症状を呈することも稀ではありません。そのパニックの原因となる不安には自身の否定的評価への恐怖などが背景にあります。パニック症においてはパニック発作それ自体が不安の対象となることで鑑別されます。



社交不安障害、社交不安症に関する問題です。
外来でこの疾患に遭遇することは多いのではないでしょうか?
薬物療法や精神療法によって改善可能な疾患で、直観的に診断しやすい疾患です。
精神科専門医試験を通して、頻繁に遭遇する疾患への基礎知識をおさらいしておきましょう。


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