精神科専門医 第9回63番 睡眠障害



睡眠障害に関する問題の解説です。
今回の問題は9回の63番です。

正解はb.cです。


では、各設問について考えて見ましょう。



a

うつ病でレム睡眠潜時の短縮が見られます。
通常は入眠後、90分程度でレム睡眠が開始されますが、うつ病ではこの「レム睡眠潜時」が短縮することが知られています。
つまり、通常よりも早くレム睡眠が出現するということです。

b

反復性過眠症についてはHLAについての言及はありますが、血液検査でわかる指標は発見されていません。

※反復性過眠症とは?
反復性過眠症は中枢性過眠症群に分類される疾患です。クライネ-レビン症候群として知られ、「認知機能の変動」、「精神症状」、「行動障害」を伴う重度の過眠病相期が、再発と寛解を繰り返す疾患です。
典型的な病相期は10日間(2.5日から80日間の範囲)持続し、病初期は感染やアルコールを契機とすることがあると報告されています。病相期には1日に16時間から20時間眠ることがあり、食事と排泄のためたけに覚醒し起き出します。(失禁はしない)
この疾患は典型的に中央値14年の自然経過後に消退すると報告されています。

では、この血清フェリチンの低下は何を意味しているのでしょうか?
血性フェリチンの低下と関連した睡眠関連疾患はレストレスレッグズ症候群(RLS)です。
鉄欠乏の指標としてフェリチンが用いられています。
低下の基準に関してはいくつかの数値が提唱されていますが、本邦のガイドラインではフェリチン<50 ng/mlが使用されています。実臨床では、これ以上のフェリチン値(75 ng/ml)を目指すケースもありますね。

RLSとフェリチン低値の関係としては、ドーパミンの合成時、補酵素として鉄が使用されることが考えられています。


c

閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)は気道の閉塞に伴う無呼吸、低呼吸を認める疾患です。
呼吸イベントに伴い睡眠の分断が起きるため、浅睡眠が増加し、深睡眠が減少します。
簡単に言い換えれば、深い睡眠が取れないと認識してもらうと良いと思います。


d

周期性四肢運動障害はperiodic limb movement disorder(PLMD)と呼ばれます。
この疾患は、(periodic limb movements in sleep:PLMS)と呼ばれる、睡眠中に「反復性」で非常に「常同的」な四肢運動が周期的に出現します
成人で睡眠中にPLMS15/hが診断基準に用いられています。
睡眠中の四肢運動によって入眠困難や微小覚醒が起きる疾患ですが、通常は睡眠中の覚醒に関しては自覚はありません。

また、PLMS5/hRLS患者の8090%、レム睡眠行動異常症(RBD)70%、ナルコレプシーで4565%で見られます。
重要な点として、これら三つの疾患のうち、一つでも診断基準を満たす場合はPLMDと診断してはいけないと決められています。

e

中枢性過眠症であるナルコレプシーはtype1type2に分類されます。3ヶ月以上継続する日中の眠気を主とした疾患です。

その他の主な症状はです。
睡眠発作:覚醒から突然睡眠に陥る
カタプレキシー(情動脱力発作):喜びなどの情動に伴って脱力が生じる
入眠時幻覚:眠りに入る際に幻聴や幻視が生じる
入眠時麻痺(金縛り):入眠幻覚に伴って、全身に脱力が起きる


診断に用いられる検査は、睡眠潜時反復検査 Multiple Sleep Latency Test (MSLT)と言う、寝付きやすさを確認する試験です。この検査で入眠潜時(寝付くまでの時間)が平均で8分未満やSleep onset REM sleep period (SOREMP)という、入眠後15分以内(通常は入眠後、90分後に出現)にレム睡眠が出現するかを確認します。

また、髄液中のオレキシン濃度の低下はナルコレプシーtype1の診断基準となっています。

オレキシンは覚醒に関与するホルモンであり、スボレキサント(ベルソムラ®)はオレキシン受容体を遮断する睡眠薬として有名です。この薬剤はナルコレプシー患者には禁忌となっていますね。



参考:睡眠障害国際分類第3版



さて、今回の問題は上記説明の通り、b.cとなります。
この問題は細かい知識を知らなければ結構な難問かもしれません。
eのナルコレプシーと脳脊髄液のオレキシン濃度の低下については、スボレキサントがオレキシン受容体のアンタゴニストで、ナルコレプシーと関係しているという知識があれば正しいことが予想できます。
しかし、aのうつ病とレム睡眠潜時の短縮の関係は知らなければ正当にたどり着くことは困難でしょう。
理想としては、フェリチンとRLSの関係を知っていることでbが誤っていることに気づくことと、cは感覚的に誤っていることに気づくといったところでしょうか?

うつ病とレム睡眠潜時の関係については、一対一対応で記憶すれば正当できるので、ぜひ覚えておきましょう!

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