精神科専門医 第9回2番 PTSD

今回の問題は第9回の2番です。



DSM-5におけるPTSDの診断基準に関わる問題であり、その内容を把握していれば正答できます。


正解はd, eです。



a

過覚醒症状は診断基準を構成する重要な要素の一つです。
不眠症やいらだたしさ、過度の警戒心や驚愕反応などの症状で、交感神経機能との関係が示唆されています。
子供の中には、過覚醒状態が、全般的にリラックスできないことに加えて、落ち着きのなさ、かんしゃく、集中できないといった症状で現れることもありえるとされています。

b

PTSDの診断に重要な要素として回避が挙げられます。
これは、心的外傷となった事に関連する思考や行動を回避しようとする努力、陽性の情動を体験できないこと、(快楽消失:anhedonia)、心的外傷となったことを想起する能力の低下、情動鈍麻、無関心や現実感消失、未来が短縮した感覚などがあるとされています。
そして、回避のためにアルコール問題を抱えることがあります。
また、一般的にPTSD患者はうつ病・パニック障害など他精神疾患の併存も多くなります。

c

虐待をはじめとするさまざまなトラウマ体験を契機とします。



d

トラウマのフラッシュバックは侵入症状といわれるように、「想起する」ものではなく「勝手に想起されてしまう」という性質を持ちます。
そのためこの選択肢は誤りと判断できます。
少しややこしいのでdを正答に選びにくかったかもしれませんが、a~cが正解であることと、eが間違いであることは直ちにわかるので、dを誤りと判断することもできますね。

e

PTSDの診断を下すには各症状が1か月を超えて存在する必要があります。
1か月に満たない場合には、急性ストレス障害(Acute Stress Disorder: ASD)としてPTSDとは区別されることになっています。よってこの選択肢も誤りです。



※補足


そもそのもPTSDの特徴

・心的外傷となった出来事の後に始まる侵入症状・心的外傷に関連する刺激の回避・過覚醒症状

この設問では、上記三つについての内容が含まれています。
PTSDは強いストレスに暴露され、上記の様な症状が一ヶ月以上継続します。
本人は関連する刺激を回避しているにも関わらず、ふとしたタイミングで、心的外傷となった出来事が再び起こっているかのように行動したり感じたりする「フラッシュバック」や、苦痛な記憶や夢などの侵入症状が出現します。
そして、上記でも説明したような不眠症やいらだたしさ、過度の警戒心や驚愕反応などの過覚醒症状を伴います。


参考文献:DSM-5


PTSDを専門に扱っていない限りは、診断基準や特性について全てを深く理解している医師は少ないと思います。
しかし、トラウマをふまえた精神医療的かかわりはこれからの診療においては欠かせないものとなるでしょう。
診断基準を含めた症状、対処方法などをふくめ、専門医試験の対策のために、基本事項に関してこの機会に勉強しましょう!



第9回 解答一覧


目次です。各記事まとめもあり。

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